きゆさだのブログ

ワイルドサイド抜け作

日記

昨日、インソールがボロボロになった靴をミスターミニットに持っていったら、それ以前に右足のつまさきの底がすりきれて大きくひび割れていたことが判明。言われるまで気づかなかった。道理で右だけ雨でぐしょぐしょになるわけだ。まだ半年しか履いてないのに。

発言小町によれば、4000円程度の靴を毎日履いていれば半年でダメになるのが普通らしい。とすれば、私は靴が数年保つのが当たり前だといつから思っていたのだろう。大学時代履いていたコンバースの感覚か、それとも親の感覚か。オトナ女子の諸先輩方は2〜5万円くらいの靴を何足か使いまわして数年保たせているらしい。中敷と靴底の間で人知れずボロボロになっていたインソールは、紙パルプを固めただけのものだった。

一昨日、いろいろあって入っていたプロジェクトを抜け、年末まで続く予定だった残業がなくなった。昔からやりたかった言語で、社内でもレア度の高い案件だったので悔しいけれど、精神衛生には代えられなかった。ここ数ヶ月社内ではどんどん味方が減っていくような感覚すらあったけれど、別部署の先輩や産業カウンセラーの先生からはこっそり励ましの言葉をいただいた。

別案件の仕事をもらって、それはエクセルだけで済む、大した技術もいらない作業なのになんだかやっぱり遅々として進まない。何階層も入り組んだ作業フォルダの中を探しまわること自体が苦手になってしまったらしい。こればっかりはどの案件でも避けられない。そのうち治るだろうか。

定時であがって元町のドクターマーチンへ向かう。いちばんベーシックな黒い革靴を買うつもりでいたが、いつものようにスエードのものが目に留まる。もう廃盤になってしまうという。比較的柔らかく手入れも楽だというので、軽く試着して即決で購入。レジで店員さんが「ルミナリエ見に行かれましたか?今年は一番電飾が多くてきれいらしいですよ」という。神戸に住んで4年になるけど、ルミナリエに行ったのは子供の頃の家族旅行1回きりだ。

大丸前の交差点に出ると、広い道路は看板に沿って歩く人ごみで川のようになっていた。看板には「ルミナリエまであと30分」とある。向こう岸の森谷商店を目指して渡ったけど、揚げたコロッケはちょうど終わってしまったところだった。なんとなく気持ちを持て余し人の川に混ざってみたら、なかなか抜けられそうにない。ルミナリエ、平日だし見ておくべきだろうか。見るなら一眼レフ持ってきたかった。これから一人でルミナリエを見たとして、自分がどういう感情になるのか想像がつかない。中敷きを2枚入れて履いてきた例の靴、少し足がしびれてきた。さっきから小雨がぱらついている。ふと「出口」と書かれた柵の抜け目を見つけたので、列を逸れてそちらへ抜けた。そこは中華街の入り口だった。

さっきから私は、イヤホンで折坂悠太の『平成』を聴いている。「揺れる」のメロディとともに、小籠包や串揚げが積み上がった屋台の間、立って食べる人々をよけて縫うように歩く。こんなにたくさんの食べ物が並んでいるのに、なぜだか匂いはしてこず、腹もあまり減ってこない。筆文字のネオンや赤ちょうちんの光が濡れた路面に反射し、ついでに私の眼鏡についた水滴も、静かにぼやけて光っている。傘はないし、さすほどでもない。

中華街を抜けるとにわかに暗くなった。古本屋の1003(センサン)に行ってみたけど定休日だった。戻る。

さいころ、たぶんルミナリエと同じタイミングで中華街のレストランに入ったことがある。妙に小骨の多い鶏のから揚げを食べて店を出たあと、それが蛙だったことを両親に知らされ泣いた。でもおいしかった。あの店はどこにあるのだろう。
一昨年、父が出張で来たときにも中華街の別のレストランに入った。すごく空いていた。みな路上で食べるので中にはあまり入らないのだ。味は普通だった。
中華街の外にも旨い中華屋は結構あり、それを知っている神戸市民はふだんあまり中華街に行かない。でもせっかくなので、唯一ソラで名を覚えている豚まん屋に寄ろうと思った。

ふたたびほの赤い街を歩く。ルミナリエよりこちらの方が、今の自分に合っていると感じる。歩いているとたまに雑貨屋の前を通る。強い白熱球で照らされた屋台の合間、奥まった薄暗いガラス戸の中に、年季の入った中国雑貨が積み上がっている。通りの赤く明るい虚飾は青白い蛍光灯の前では勢いをなくし、無機質な営みの姿がしっかりとのぞいて見える。小さい頃この通りに感じたファンタジー、異国情緒はもう見出だせないけれど、赤塗りのコンクリ壁や手書きの鍼灸の看板、屋台に掲げられた写りの悪い料理写真には、観光の名のもとで複雑に皺を刻んだ、この通り特有のままならなさがにじみ出ていた。すこし愛着が湧いた。

広場の前で老祥記の列に並んでいると、お姉さんが注文を取りにやってきた。1つだけ持ち帰るつもりだったが、1週間くらい保つというので3つ注文。持ち帰りなのでほとんど待たずに受け取れたけど、ここで立って食べたほうがオツだったかもしれないと思う。

冷えきった肉まんの袋を持って歩いていると、「ゴマ団子揚げたてだよー」の声がする。先ほどの立ち食い欲を果たしにひとつ買い、閉店したのかつぶれたのかわからない店のシャッターの前で慎重に頬張る。それでも熱さのあまりハフハフやっていたら、さほど寒くない曇り空にも白い息が上っていった。

目の前では、ばったり数年ぶりの再会を果たした夫婦が2組、驚きと喜びの入り混じった声で話していた。何年ぶりかももうわからんくなってしもうたわ。今は神戸ですか?いや、西北です。

アルバム最終曲「光へ」は、ちょうど元町駅の構内に入るタイミングで終わった。直前にふと西の空を見ると三日月だった。

書いた記事まとめ 6月〜11月

だめだ、月報は続かねえだ。

とりあえず書いた記事だけこちらにまとめてます。といってもほぼアンテナですが。

アンテナに合流してから書く量が格段に増えてました。最初は書きたいこと見つけられるかどうか不安でしたが全くの杞憂に終わり、それどころか書きたいことが後から後から出てきて手が追いついていません。不思議です。そして過去類を見ない規模の本業繁忙期まで重なってきました。特に10月はきつかったけど楽しかった。物事が起こる時って、得てして順繰りには来てくれずだいたい畳み掛けてきよる。気後れせずまるっと引き受ける勇気が湧いてきてるのはいいとして、不義理につながらんよう踏ん張っていきます。

文筆そのものに関しては我ながら手応えもあるものの(褒めてくれる人の母数が増えたしな)、まだまだはちゃめちゃに至らぬところばかりです。手応えと至らぬ点の両方を携えていられる今の状態にとても充実を感じます。

ボロフェスタ関係各位お世話になりました。エンディングムービー見れなかったの、後悔はしてませんがやっぱり残念ですね。書いていない中ではホムカミが半端なく良く、その風格にあまりに混じりけがないものでのっけから泣きそうになっていました。そして山田さんのPAINLOTでもうひとつ、最終日の夜に買った大阪のパン屋さんのプレッツェルが大変甘くておいしくて疲れが吹き飛びました。足が死んだのはたぶん私の靴の中敷きが後入れなうえしょぼすぎるから。野鳥の会のやつに入れ替えよかな。

より大きい舞台を見据えた労作をリリースし、ついに時の人となった感のある中村佳穂さん。音楽について書く人を語りたくて語りたくてたまらなくさせる人というのがごくたまに登場しますが、まさしく彼女はそれなのだなあと思います。まだ言語化されていない未来へのヒントを纏っているのです。私もまだ、というよりインタビュー出してからいっそう語りたい考えが頭を巡っています。

残業で本屋に行けてないので雑誌はまだですが、Webだけでも大石さん、小熊さん、金子さん。「中村佳穂 インタビュー」でググるとそんな面々のページと一緒に私の記事が並んでいる。なんてこった。インディー中心のメディアをやっているとこういう機会はそうないのです。本当にありがたい。そわそわしてレビュー含めほぼ目を通してますが、彼女を表現しようとそれぞれの知識と語彙と表現力をフル稼働させたような熱のこもった文章ばかり。精進しかねえ……。

あまり作品に関して詳しい感想を述べられていないのですが(すみません)、年間ベストの時にします。

後半が私です。短い原稿ですが、RBBのアルバムの感想、普段考えていること、そして筆が乗った時の自分の書き味がいい感じにミックスできたなあと思います。思い入れのある案件ほど文章が硬直化して無味になってしまう癖、これから直していけたらもっといいものがたくさん書けるはず。

 

月報 2月/3月/4月/5月

すっかり月報が月報でなくなってしまいましたが、今月分からはちゃんと月次にします。いろいろ頑張ります。

書いた記事

2月

http://ki-ft.com/interview/munonomoses-curry/

3月

https://kyoto-antenna.com/post-20372/

4月

http://ki-ft.com/interview/verandah-anywhere-you-like/
http://ki-ft.com/music/kansai-pick-up-new-disc-review-vol12/

5月

https://kyoto-antenna.com/post-21563/

行ったライブ

2月
3月
  • 4 CASIOトルコ温泉/キイチビール&ザ・ホーリーディッツ/トリプルファイヤー/バレーボウイズ/mei ehara @KYOTO SUCCESSION(京都 磔磔)
  • 9 ペペッターズ/ANATAKIKOU/Emu sickS/soha@心斎橋Pangea
  • 18 入江陽/かねこきわの/さとうもか/小鉄 @岡山 城下公会堂
  • 20 サニーデイ・サービス @梅田バナナホール
  • 21 スカート @京都 磔磔
  • 25 ミツメ @梅田TRAD
  • 27 The Songbards/ベランダ/YAJICO GIRL/Slimcat @神戸VARIT.
4月
  • 1 Easycome/ギリシャラブ/ラッキーオールドサン @心斎橋Pangea
  • 11 ふちなし/ペンギンラッシュ/MokeraMokera/The McFaddin @天王寺fireloop
  • 13 山中ジョンジョン(ダイバーキリン)/Ribet Towns(小) @大阪 淡路アトリ
  • 14 冷牟田敬band/空間現代/服部俊 @京都 外
  • 17 優河 @梅田シャングリラ
  • 18 さとうもか/脳内麻薬/ヤノフトシ/みのようへい/池藤雅哉 @梅田ハードレイン
  • 21 空気公団/ザ・なつやすみバンド/STUTS/テニスコーツ/東郷清丸/NRQ/yumbo @in da house(旧グッゲンハイム邸)
  • 21 片想い/GUIRO/Shohei Takagi Parallela Botanica/ヒゲの未亡人/三田村管打団?/両想い管打団! @in da house(旧グッゲンハイム邸)
5月

仕事等見られなかったものもあり、例によって大方抜いてます。

さとうもかさんリリパのときに小鉄さんと話していて冷や汗をガンガンかいたのを未だに思い出します(小心者)。その後大阪でのライブのときに彼女に教えてもらった腕を後ろでパタパタさせる体操のおかげで、最近二の腕がちょっと細くなりました。

5月これだけってまじで?なんか忘れてない?本当に?GW、出張、社員旅行、関西コミティア等々バタバタしているうちにこんな…。

よく聴いたもの

  • 鈴木祥子『SNAPSHOTS』
  • NRBQ『MESSAGE FOR MESS AGE』
  • bonobos『FOLK CITY FORK .ep』
  • 優河『魔法』
  • Wanna-Gonna『In the Right Place』
  • 東郷清丸『2兆円』
  • さとうもか『Lukewarm』
  • Lowell George『Thanks, I’ll Eat It Here』
  • くるり『その線は水平線』
  • The Sundays『Reading Writing And Arithmetic』
  • J Hus『Common Sense』
  • ベランダ『Anywhere You Like』
  • The Zombies『Odessey And Oracle
  • Cosmo Pyke『Just Cosmo』
  • Judee SillDreams Come True
  • The Band『Music From Big Pink』
  • U.S.Girls『In a Poem Unlimited』
  • 花柄ランタン『まともな愛のま、まほうの愛のま。』
  • 前野健太『サクラ』
  • Bruno Pernadas『Those who throw objects at the crocodiles will be asked to retrieve them.』
  • cero『POLY LIFE MULTI SOUL』
  • NRQ『レトロニム』
  • Arto Lindsay『Cuidado Madame』
  • Childish Gambino『Awaken, My Love!』

雑感

3月:よしむらひらくと春

桜のつぼみの写真をスマホの壁紙にしていたくらい春になるのを待ちわびていたのだけど、なったらなったで、やる気を根こそぎ奪うような陽気をうっとうしく思うこともある。最近あらためてよく聴いているよしむらひらくさんは寒いのがとても苦手だそうで、そのせいか、冬から春への移り変わりを歌った曲がとても多い。しかも“道玄坂を登りきる クソみたいな暖かい風”(「tokyo2012」)とか、“四月の塊が 少し怖くなった”(「スイートチョコレートラバーズハイ」)とか、決して諸手を挙げて喜ぶことはないのがミソだ。生き物としての純粋な喜びと、大事な考え事までぬるい陽気でごまかされてしまうようなわずらわしさ。それらがないまぜになった“春”への複雑な思いがにじむようで、アレグラを飲みまくりながら勝手にシンパシーを感じていた。

4月:ショーケースじゃない

in da house @旧グッゲンハイム邸は、あらゆる演出に主催・MC sirafuさんの矜持がギチギチに詰まった濃い2日間だった。「ファック予定調和!」の声のもと決行されたタイムテーブル非公表。快い環境でなにもかもが予定外になると、人間はかえっておおらかになる。好きなアーティストを最後尾で見ることになったり、トイレ行ってるうちに肝心のところを見逃したり、そういうことにこだわらないのが一番良い過ごし方だっていう暗黙の了解ができる。sirafuさんが重ねて言ってた「適当でいんすよ!」とはそういうことだと思う。この場でGUIROに出会えたのが本当に良かった。NRQはものすごく前の方で見たのに音がめちゃくちゃ良かった。東郷さんのあのギターがアンプを通してないと聞いて驚いた。SSW高城晶平の「明日の天使」は本当に名曲だった。

5月:踊るが変わる(かも)

昨年秋のstars onで「魚の骨 鳥の羽」を初めて聴いた時は、その複雑さに圧倒されるあまり呆然と突っ立っているしかなかった。だから『POLY LIFE MULTI SOUL』を買ってきた時も相当な覚悟を持ってかかったのだけど、ところがどっこいそこにあったのは、要素こそ多いけど記憶よりもずっと整然としたダンス・ミュージックだった。

不勉強なので雑なことしか言えないけど、前作でceroが邦楽に新しいジャンルを増やしたのだとすれば、今作はさらに大きな括りで、“踊り”の種類がまるごと一つ増えたようなカタルシスを感じている。今の時代のためにアップデートされたクラブにもロックにも収まらない踊りの音楽。ラテンのリズムと日本の歌謡曲の関係には長い歴史があるそうだけど(ちゃんと勉強します)、少なくとも近年のそれはダンス(カラオケ映像のねーちゃんのラテンダンスじゃなくて、私達がライブ会場で体を揺らすやつのほう)とあまり結びついていなかったんじゃないかと思う(ここも要調査)。それが本来踊れるものであることを現行のラディカルなビートと一緒に示してくれた。国内のライブハウスで繰り広げられる踊りを、何段階も自由にしてくれそうなアルバムだと思った。

あと、「かわわかれわだれ」のギミックと前よりも日本語の押韻が強調された譜割りはとても今っぽいオリエンタリズムだと思うのだけど、日本語話者じゃない人はこれをどう受け取るのだろう。

ひとこと

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社員旅行で有馬温泉と六甲山に行った。有馬ではブラタモリ知識を元手に同室の上司の観光案内をして、温泉水が200万年前の海水なのだといった気がするけど正しくは600万年前。申し訳ないけど訂正するタイミングを失った。六甲高山植物園はどれがどれだよってくらい地味だけどよく見ると変な形、みたいな花が多いのがとても良かった。帰りに載った山上バスは今時ICカードが一切使えないパンクス仕様で、車内で私たちより先にそれを知って面食らっていたのがおばあちゃん2人組だった。もうみんな適応しきってるので早く対応してあげてください。

月報 2018/1

書いたもの

smashwest.com

京都のバンド・ベランダの紹介記事。地味にki-ft以外のWeb媒体は初めてでした。
ここに書いている次作とは4/11リリースの2nd『Anwhere You Like』。ライブで聴いた新曲はアバンギャルドな展開の曲も多かったのでくそ楽しみ。Ba中野さんボーカルの曲もあるだと…。

見たライブ

  • 6 ベランダ @京都 二条nano
  • 12 FOSTER THE PEOPLE @なんばHatch
  • 23 Mac Demarco @梅田クラブクアトロ
  • 26 中村佳穂/ @京都 向日Second Rooms
  • 27 中村佳穂BAND @京都 向日Second Rooms

 少ない。原稿でてんてこまいになってしまい見られなかったものがいくつかある。特にFLEET FOXESとさとうもかさんの初大阪ライブを逃したのは痛かったな…自己管理がんばろうな。
 Mac Demarco、ライブの半分近くが歌モノマネやダベりやおならのSEを仕込んだパッドで遊ぶ時間だったのでびっくりした。びっくりしつつもゲラゲラ笑いながら見た。そしてゲラゲラ笑いつつも、心の中では英語わかるようになりてえ…と切々と思っていた。そういうスタイルだと知らなかったのでてっきりインディー・ポップ好みの若者がいっぱいいるのかと思っていたけど、今まで見た来日公演の中で一番外国人率が高かった。
 即完だった27日の中村佳穂BANDワンマンに運良く滑り込めたのは本当によかった。キャパ70人って聞くと狭いようだけどnanoもそのくらいなんですね。たくさんあった新曲はラテン×ポストロック×フューチャーソウルというか、とりあえずどれもすごいことになっていた。スケール的にも完全にもっと広い場所で鳴らすことを想定していたので胸が熱くなった。勢いでタオル地のTシャツを購入。サマソニに着ていきたい。

よく聴いたもの

 YYGを改めて聴き込む。年間ベストに入れればよかったと思う。
 ジュディ・シルの「That’s the Spirit」を聴いていると、最近読んだ『不滅のあなたへ』を思い出す。石、魂、復活というワードとか、キリスト教的なムードが強い(というか、新約聖書が物語の下敷きになっているのだと思う)ところとか。
 レミ街のやつはふつうにブラスバンドサウンドがフューチャーされているのかと思ったら、ほぼサンプリングの素材みたいな扱い方で料理していたので興奮した。ヒップホップで使われるフルートの存在感に近い。

読んだやつ

内田樹『街場の文体論』
大学の講義録だけどライティングのノウハウ本ではなく、おもしろい文章はなぜおもしろいのか、についていろいろな角度から迫るような内容。読んでいる間、昔タナソウさんが講座に来てくれた時言っていた「文章を読むという行為には、本来凄まじい喜びが伴うはずなんです」という旨の言葉をしきりに思い出していた。
 特に後半、国内の学会で教授陣にアピールするためフランス語で論文を発表した若い研究者に、内田さんがいたく落胆するエピソードがとても身にしみた。フランス語がわからない聴衆全員を切り捨てたのだと。世の中には読み手への敬意がある文章とない文章とがあって、特に広く読まれるためには“わかる人”のために“わからない人”を切り捨てだしたらおしまいなのだ。かといって、単に難解な言葉や引用を避けたり論の筋道を平易にしたりというのも、また“敬意”とは違う。
 研鑽を積めば、少々伝わりにくい(けど適切な)表現や引用を全て諦めたりしなくとも、広い間口できちんとおもしろいことは伝えられるのだと思う。今まで、引用元も言葉の意味も知らない私にその“凄まじい喜び”をくれた文章はみんなそうだった。だからそういう到達点を諦めずに努力したい。まあ私はちゃんと平易にすることすらまだ出来ていないので、まずそれなんですけどね…。

磯部涼『ルポ川崎』
 私の地元も南下するほどヤバイ系の工業地帯。実家は川崎で言う北のオザケンエリアなので決して当事者ではないけど、サウスサイドでレジ打ちやポスティングのバイトをした時の、界隈をチラ見するような思い出はいくつかある。だから、ヤンキー活動以外にやることがあるという意味で川崎のヒップホップカルチャーは少し羨ましい。正直ウチのほうは全然田舎だし高齢化も著しいけど、私が知らないだけでいるのかな、ラッパー。いたらいいな。

岩手旅行⑤ アルティメット・ハイパーフォーク

もう4ヶ月近く前の旅行記ですがまだ続きます。

 

 ふたたび市街地に戻り、このあたりで有名なラーメン屋に入る。平日なのでリーマンや作業着のおっちゃんでにぎわっていて、おばちゃんがほぼタメ口で注文をとってくれる。ラーメン3つとチャーシュー麺1つ。運良く客の波の間に入れたようで、注文したあと店外を見ると行列が出来ていた。スープはシンプルな鶏ガラ醤油で、麺は中太の縮れ麺。具は、鶏肉のチャーシューとメンマと白ねぎ。醤油とねぎの風味が強い。実はそこまで好みではないのだけど、あまりにも久しぶりに食べたからか、前よりもおいしく感じられた。舌がおおらかになったのか、懐かしさとの相乗効果か、我ながらチョロい味覚だなと思う。店内の壁には、あまちゃんのポスターや出演者・スタッフ陣のサインがずらりと貼ってあった。

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月報 2017/12

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

書いたもの

ki-ft.com

ベストディスク、安井さんとクロスレビューtofubeats『FANTASY CLUB』をアニメ『輪るピングドラム』の話と絡めて。相当丁寧に分解できる力量がないと抽象的な話は難しい。題材選びでも技術面でも課題が多く残った。勉強になった。

行ったライブ

  • 6 スカート/トリプルファイヤー @梅田シャングリラ
  • 15 Easycome/Keens/Crankbait./ムノーノ=モーゼス @神戸SLOPE
  • 16 ギリシャラブ/吉田ヨウヘイgroup @京都ネガポジ
  • 24① 吉田省念(トリオ編成) @レコードフェア京都(高島屋京都店)
  • 24② Oliver/guruGURU/KONCOS/世田谷ピンポンズ/ベランダ/ゆ〜すほすてる/LADY FLASH @バレーボウイズレコ発サーキット(京都VOXhallなど)

 残業がややあったのと年末帰省するのとで少なめ。15日のEasycomeと16日の吉田ヨウヘイgroupが素晴らしく、この週は幸せだった。

よく聴いたやつ

よく読んだやつ

 BEASTARS、案の定ハマった。考えれば考えるほどディストピアに思えてくる世界設定に、中二以来のダークファンタジー心をくすぐられる。そしてレゴシがかわいい。長い記事を後でここに書こうと思うけど、ズートピアを見返すのが先だ。

 街場の文体論は先月借りたやつでまだ読み途中。30%くらい。講義形式で読みやすいので年末年始のうちにガッと進めたい。冒頭の課題「私の周りで一番粗忽な人」はよく考えたけど自分以外思いつかなかった。ネガキャンとかじゃなく、まじで。 

雑感

 月頭にSpotifyに入った。アルバム1枚終わったあとに自動でプレイリストが再生されるのがいい。いいけど、邦楽のアルバムの後には邦楽しか流れない、更に同じアルバムの別の曲が流れることもある。収集したデータを元にそうなってるのだと考えると複雑だ。チャートやプレイリストがまだあまり見れていないのでこれから使いこなしたい。

  25歳になった。四捨五入すればアラサーの域、ついに来るこの時を実は春くらいからずっと覚悟していた。心の準備だけはバッチリで、誕生日前日にネットカフェの受付でうっかり「25」と書きそうになったくらいだ。同年代が結婚したり転職したり仕事が軌道に乗ったりしていて、自分もいろいろと今後を考えてしまう。自分がどういう人間になるのか、自分で選んで決めなければならない。

  スピッツの出るレディクレに行かなかった29日、シネ・ヌーヴォに3回目のハッピー・アワーを見に行ってイベント納めとした。その足でなんばからバスに乗って帰省した。同じ映画を間隔をあけて3回見るということは今後もなかなかないだろうな。映画は音楽や漫画ほどリテラシーに自信がないのだけど、俳優さんの表情、間の取り方、カメラの動きなどなど、2回目よりもしっかり見て感じ入ることが出来た。とても充実した時間を過ごせた。

新年の抱負

  • たくさん書く
  • 読書ペース加速
  • 年度明けて閑散期に入ったら英語の勉強をはじめる
  • 大学時代のコミュ力を取り戻す…

ベスト・アルバム2017

今年作編

番外

 tofubeatsFAMTASY CLUBについての論考はネット上にものすごくたくさん書かれている。どういう層にこのアルバムが特に響いたのかがはっきり現れている。私もその一人です。対して各音楽メディアのベストにあまり挙げられていないのはまず、人文・思想界隈でのリリックの評価が割合を占めているからかなと思うのが一つ。そして、ヒップホップと歌謡曲の境目にある音楽の扱いがいよいよ難しくなってきているのが一つ。tofubeatsほど際どい立ち位置のアーティストが今後どれほど出てくるかわからんけど、少なくとも減るよりは増える可能性の方が高そうだ。だから、ミューマガで歌謡曲からもヒップホップからもあぶれているのに言及はされている、という完全宙ぶらりんな扱いには、かえって今後を感じてワクワクした。爺さんになったPUNPEEが言うように、ラッパーが朝の顔になる時代が来れば、そいつの出すアルバムはどっちに入るんだろう。

 あまり他所で挙げられているのは見かけないけど、特にリリックについてはシャムキャッツFriends Again』も頑として譲れない。正直Coyote」にまつわるタナソウさんのツイート以上のことは言えないのだけど、社会の分断の手詰まり感を、失意や諦念を避けながら、ここまで写実的に描いたアルバムは他にないと思う。「Coyote」以外で言えば、「Funny Face」の“もう一回 ふざけたら ただじゃ おかないよ”、“どうしたいってちゃんと聞いてみても/あまえて くるなら”という一瞬ヒヤリとする歌詞。猫の話にカモフラージュされてこのラインが入ることで、「些細な日常の愛おしさと、それだけ考えて過ごしたんじゃ済まされない状況」がきれいに両立した本当に絶妙なアルバムだと思う。「日常、素晴らしいよね」で済ませないことにはメンバーもかなり気を使っていたようで、社会へのまなざしを忘れていないことが1曲目2曲目の時点で示されているからこそ、3曲目の名曲「Four O’clock Flower」になおさら感動させられる。この3曲目がゆうちょのCMに起用されたのも納得で、とても合っていると思う。近い立ち位置でやや諦念を含んだものとして橋本絵莉子波多野裕文を挙げた。特に「飛翔」「トークトーク」「アメリカンヴィンテージ」あたり。

 “社会へのまなざし”という言葉は『FANTASY CLUB』のレビューを書いたときにも意識していた(書いたかも)。今年の俺的一言はこれになるのか。それで言ったら、スピッツ「歌ウサギ」も草野マサムネの社会へのまなざしが反映された、彼らとしてはかなり異質な曲だった。2番サビ“敬意とか勇気とか生きる意味とか 叫べるほど偉くもなく”の二行は、おそらく、強いオピニオンを持たない歌が評価されにくい状況に対する草野マサムネの意思表明だ。とりわけブラックミュージックには大事な要素である“敬意”を入れる思い切りがすごい。論考の方にもそう書けばよかったのだけど、ちょっと思い至るのが遅かった。

過去作編

 出遅れて後追いで聴いているものと、今聞くとなんとなくいいなと思えるもの。スピッツは、シングル中心の30周年ツアーのセトリに『惑星のかけら』から3曲も入れた。スピッツのメンバーのモードはその時々の新曲よりも、ライブのセットリストやカバー曲のアレンジに現れることが多いと思う(セトリの叩き台決めてるのは坂口さんらしいけど)。ギターのディストーションへの凝りようや「波のり」の比較的思い切ったリアレンジを聴くにつけ、やっぱりポスト・パンクグランジ回帰なのかなと思う。そっからイギリスのグランジリバイバルへの意識を感じたりなんかして。

 トッド・ラングレンとかNRBQとか、NAVERまとめとかで特定のアーティストの代表曲が並べられたページを見ると、自分がいいと思うものが挙がっていないことがままある。そしてスカート澤部さんがそれをラジオでかけたりする。今後を占う意味でもこういうアンテナは大事に研いでいきたいと思う。

あいさつ

 今年関わってくださったライター講座の面々やミュージシャン、各メディアの方々、お世話になりました。そして一つでも記事を読んでくれた方、ありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。

 来年はもっと本を読みたい。映画も見たい。インプットの量を増やしたいのに今の生活サイクルだと睡眠時間を削るしかなく、ちょっと悩んでいます。時間の使い方が効率的でないのは明らかなんですが、それは人生半分ぐらいずっと思いながらも出来ていない事なわけで。なので現状図らずも、ただ“決意を新たにする”だけになってしまう時がよくあります。それは一番無意味なので、どうにかして具体的かつ強制的に自分を駆り立てられるような作戦立てをしなければならないんですが。極論しか思いつかない。

 夏に気合を入れてスピッツをやったあたりからコンスタントに書く準備が出来て、それから一応、およそ月1本のペースで続いています。あれこれ考えすぎていつも行動が遅くなる性分なので、来年はネガティブなことをあまり考えず、場数を増やしていくことを第一にやっていきたいです。