岩手旅行⑤ アルティメット・ハイパーフォーク

もう4ヶ月近く前の旅行記ですがまだ続きます。

 

 ふたたび市街地に戻り、このあたりで有名なラーメン屋に入る。平日なのでリーマンや作業着のおっちゃんでにぎわっていて、おばちゃんがほぼタメ口で注文をとってくれる。ラーメン3つとチャーシュー麺1つ。運良く客の波の間に入れたようで、注文したあと店外を見ると行列が出来ていた。スープはシンプルな鶏ガラ醤油で、麺は中太の縮れ麺。具は、鶏肉のチャーシューとメンマと白ねぎ。醤油とねぎの風味が強い。実はそこまで好みではないのだけど、あまりにも久しぶりに食べたからか、前よりもおいしく感じられた。舌がおおらかになったのか、懐かしさとの相乗効果か、我ながらチョロい味覚だなと思う。店内の壁には、あまちゃんのポスターや出演者・スタッフ陣のサインがずらりと貼ってあった。

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 店を出て、秋まつりのお通りがはじまるまで商店街をぶらぶら。ケーキ屋さんでまめぶ味のブッセとクッキーを購入。謎に品揃えのいいお店で、スナック菓子やお供え用ローソク(故人の好物シリーズ)まである。そしてイートインには海野つなみによるアキとユイのイラスト色紙。シャッターにも絵があるみたいだけど、当然開店中なので確認できず。お店の人も、海野先生がここまでビッグになるとは思っていなかっただろうな。

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 お通りでは、来賓席のある市役所前とその周囲の道路を8台の山車が通行する。父は叔父から、市役所付近の歩道に陣取るといいと聞いたらしく、そのあたりに座り込むことにした。まわりに人がばらばらと集まりだし、道沿いの露天も少しずつ賑わいだした16時ごろにお通り開始。山車の前に、神社の輓馬や数台の神輿、ボランティア団体の宣伝などが通っていく。県庁や市役所職員の神輿は、市役所前に着くと来賓席に向き直り、しばらく前進後退しながら揉むのが恒例らしい。こちらは来賓席前の歩道の縁石にしゃがみ込んでいるので、一定おきに目の前1mまで市役所の兄ちゃんの下半身が迫ってくる。思わず視線を上げると目が合う。気まずい。完全に座る場所を間違えた。本籍だけ置いておきながらよそ者の私達は、観光の距離感すら掴めていなかったというわけだ。なかなかに申し訳ない。
 続いて大きな輓馬を引いた神社の神主と、神具を持った中学生男子たち数人が歩いていく。前夜祭の山車で笛を吹いていたのも中学生だったが、こちらは明らかに覇気のない、というかカースト下位のオーラをガンガンに放っている。なるほど、岡山の祭りでは派手に着飾ってうらじゃを踊るのがリア充の証で、地元の祭りの笛吹きはお駄賃目当てで嫌々やるものだった。こちらには踊りがないのでこういう住み分けになるわけだ。地域ごとにそれぞれ滲み出る中学生のヒエラルキー。強く生きてほしい。

 やがて、例のすごいデコトラのような山車がゆったりやってくる。神輿と同じように、市役所の前に来るとしばらく歩みを止めて、その間はお囃子のフレーズも少し変わる。それらは組ごとに代々伝わるもので、山車のギミックを出し入れするタイミングも組によって少しずつ違っていた。市役所の前だけ上部の飾りをフルオープンにし、進むときはほとんど格納してしまう組もあれば、そこそこの段階で見せたまま進んでいく組もある。理由はわからないが、組それぞれで決めていそうなあたりDIYを感じて良い。こちらの笛吹きの中学生達はゆうべより気合の入った出で立ちで、女子はふわふわに巻いたポニーテールやお団子にグリッターを振りかけ、男子は運動部らしい短髪にヘアチョークを何色も塗りたくっている。やっぱこっちはリア充だな。その中学生や、山車に繋がったロープを持って歩いている子供たちもまた、組によって統率のされ具合が違う。おばさまが引率の先生よろしく厳しくやっているところもあれば、お母さん同士もおしゃべりしながらのんびり歩いているところもある。そんな組を見て父は「ちんたらしてんなぁ〜」などとこぼす。いずれにしろ間近を通行するので、山車そのものの迫力は昨日どころじゃない。特に暮れ際にやってきた巨大な鬼の形相が凄まじく、隣に座っていた5歳くらいの男の子が、「こわい!こわいぃ~!」と泣く寸前の声で母親に訴えていた。わかる。これは怖い。なまはげといいねぶたといい、子供をガチで泣かせにいく拘り方は東北共通なのか。

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 歯並びに気合がにじみ出ている。題材からしたら横にいる弁慶と上にいる閻魔が主役のはずだが。

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 8組のなかで一番ド派手だったのがこの山車だった。最上部の赤い円盤には、フラッシュのようにパシパシ点滅するLEDがいくつも仕込まれている。さらにこれが格納するときは、根元の人形の両脇からブシューッとスモークが吹き上がる。基本、飾りの様式がパチンコのそれと一緒なのだ。こういうド派手さに眉をひそめる年配の方々もいるらしいけど、一種のヤンキーアートというか、こういうトび気味のインフレは私は好きだ。この街の若者たちのかっこよさの追求は、自分の容姿や振る舞いよりもこの山車に向かうのかもしれない。こんな装飾を凝らしていながら、この街ではチンピラのような見てくれの者はまったく見かけなかった。